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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和41年(少)3428号 決定 1967年1月19日

少年 I・M(昭二六・四・八生)

主文

少年を福岡保護観察所の保護観察に付する。

理由

一、非行事実

少年I・MはAと共謀して昭和四一年一〇月○日午後四時頃、北九州市若松区大字○○○○○の農道を自転車にのつて通行中の○場○美を認めるや、同人から帽章等を強取しようと企て、同日同時刻頃、同所においてI・Mが○場の乗車していた自転車の荷台をつかまえて引とめ、Aが自転車の進路前方に出て進行を妨害し、I・Mが○場に対して「降りろ」と申し向け、更に左手拳で同人の顔面を五、六回殴打し、続いてAが左手拳で○場の顔面を一回殴打し、よつて同人の反抗を抑圧して同人所有の学生帽の附属品である帽章外四点時価二五〇円相当を強取したが、その際前記暴行によつて同人に対し治療約二週間を要する口唇部打撲傷兼口内切創右上顎第一門歯折損の傷害を与えたものである。

二、法令の適用

上記強盗致傷の所為は刑法第二四〇条前段に、共謀の点は同法第六〇条に各該当する。

三、保護処分に付する理由

少年は生活困難な家庭環境と幼時から小児麻卑、関節炎等病気勝ちであつたことなどから欲求不満、劣等感があり、情緒不安定性が顕著であり、反面、自己顕示性が強く、外的な雰囲気、誘惑に対する抵抗が乏しくその場の雰囲気によつて粗野、即行的な行動に走る点が認められる。

本件は少年が中学生仲間の前で自己の力を誇示しようとして、単なる強がりから敢行したもので上記の各特質を裏づけるものと考えられる。

本件は理由もなく無抵抗の被害者に暴力を加へ強盗に及んだ事案でその態様は悪質なものがあるが、反面初犯でもあり偶発的過性の非行であるとも考えられる上に、少年はこの事件を機に大いに反省し真面目に登校しており、最近は高校受験勉強に努力しており、交友関係も良好になつているので、問題点とされる上記性格の矯正を図るため、在宅のまま、専門家による指導を通じて保護態勢を強化し、更生の機会を与えるのが相当であると認められるので少年を福岡保護観察所の保護観察に付することとし、少年法第二四条第一項第一号少年審判規則第三七条第一項を適用し、主文のとおり決定する。

(裁判官 大川勇)

少年調査票<省略>

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